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読売新聞『平和の祭典 広島から』に弊社が掲載されました

多彩な技術 機運高める

 東京・江東区役所前の広場。ディスプレーの周りに木材を積み上げたような高さ約2㍍のカウントダウン看板が、東京五輪・パラリンピック開幕までの残り日数を刻む。オブジェとしても目を引く「デーカウンター」。手がけたのは「タテイシ公美社」(府中市)だ。立石良典社長(42)は「地方企業がオンリーワンのものを作って世界にアピールする。五輪はそれができる場なんです」と力を込める。

 看板は、東京五輪開幕1000日前の2017年10月28日、区内で開催されたイベントで披露され、その後に区役所前広場に移された。「区民にとってモニュメントのような存在になっています」(江東区オリンピック・パラリンピック推進課)という。
 タテイシ公美社は、1977年創業。店舗看板や屋外広告を始め、近年はデジタルサイネージ(電子掲示板)を活用した看板などを、自社だけで完結させるワンストップ体制で企画、製造している。
 同社の経営理念は、単なる「看板屋」ではなく「情報伝達業」と考え、事業に取り組むことにある。「情報を伝えることで、人のコミュニケーションが生まれます」と立石社長。その言葉を裏付けるように、カウントダウン看板には様々なメッセージを込めている。
 かつて木材の集積地だった江東区は、木に親しみ、森林保護や環境問題を考える「木育」に力を入れる。そうした背景を踏まえ、タテイシ公美社では、木材を扱う会社と連携し、看板の部材にリサイクルした住宅の柱の端材を使用。また、省電力の「電子ペーパー」を使い、環境に配慮したという。
 カウントダウン看板は、江東区以外にも港区や三鷹市、一般企業など都内20か所に納入。三鷹市の看板は、災害時に避難勧告などの防災情報も流せるようにしている。別の看板では、カウントダウン表示とともに地域活動を案内するなど様々な工夫を凝らした。
 デザインや設計は、納入先の担当者と協議しながら何度も見直しを繰り返した。カウントダウンの日数を間違えることだけは絶対に許されない。2年がかりで一つ一つの看板についてチェックし、自信を持って送り出せる製品を完成させた。

 今の時代、スマートフォンが普及し、多くの人の視線が自分の手元に集中しているという。「その視線をいかに上げてもらうかが重要」と立石社長は強調する。一緒に写真を撮ったり、触れたりして、コミュニケーションのきっかけになる看板作りを掲げ、「五輪を盛り上げるツールとして役立てたかった」と続ける。
 大会を機に、競技場などの箱物から看板のようなものまで国内外の優れた製品が東京に集まり、訪日外国人客の増加も予想される。「日本の製品に潜む研ぎ澄まされたセンスを大勢の人に知ってもらうチャンス。五輪はスポーツの祭典だが、製造業に携わる我々にとっては『ものづくりの祭典』でもあるんです」
 7月24日の東京五輪開催まで残り200日を切った。各地に設置されたカウントダウン看板は着々とその歩みを進めている。
 「五輪やパラリンピックに挑む選手たちのように『ものづくりの祭典』に挑戦したい」。その精神は将来の事業展開にも生きてくるという。25年大阪・関西万博にもチャレンジするつもりだ。