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ドイツの有名雑誌『Brand eins』11月号にキャリア教育が掲載されました

ドイツの有名雑誌『Brand eins』11月号にキャリア教育が掲載されました

ドイツの有名雑誌『Brand eins』11月号

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このたび、 弊社会長立石克昭が府中市立府中明郷学園学校運営協議会会長として地域とともに取り組んでいる キャリア教育 が、ドイツの経済・社会雑誌『Brand eins』11月号に大きく特集されました。

弊社が地元・ 府中市立府中明郷学園 と連携し行っている 学生会社「模擬会社LinkS(リンクス)」 の支援活動や、子どもたちとともに行う製品開発、地域連携の取り組みが「日本でも先進的な教育モデル」として紹介されています。

人口減少や地方経済の課題に対し、地域の未来を担う子どもたちとともに挑む姿を、国境を越えて知っていただけたことを大変光栄に思います。

今後も地域の皆さまと共に、子どもたちの学びと成長を支えてまいります。


 

 

<記事の内容(日本語訳)>

 

府中──小さな町の大きな挑戦
ほとんどの学校では、久保琴音のような生徒は静かに席に座り、先生が黒板の前で語る内容に耳を傾けているはずだ。
日本語の正しい文字の書き方、第二次世界大戦の開戦時期、ピタゴラスの定理の導き方──授業とはそういうものだ。
そして、それが日本における「教育」の現実でもある。

生徒たちはほとんどの場合、先生の説明をただ聞くだけで、自分の意見を述べることはない。
試験に向けた詰め込みがすべてを支配している。
そんな中、府中市のとある教室ではまったく異なる光景が広がっている。

「もう時間がない!」
11月のある朝、久保琴音はクラスメートたちに向かって警告するような口調で言った。
「もう時間がない!広告キャンペーンもまだ決まってないし、予算も確定していないのよ!」
およそ20人の同級生たちは真剣にうなずき、すぐに議論が始まる。
「でも、まだ6週間はあるよ!」と広報担当者が声をあげ、皆を落ち着かせようとする。

久保琴音はショートカットの髪型に、他の生徒と同じく紺と白の制服を着ている。
そして彼女は、学校法人「リンクス」の社長という重責を担っている。
彼女たちの目標は、6週間以内に独自に開発した腕時計と筆箱を完成させ、市場に送り出すこと。
もし失敗すれば、その責任はすべて彼女にのしかかる。
「最近は本当にストレスが多くて……」
そう彼女はつぶやいた。

 

革命的な教育
この教室があるのは、広島県府中市という人口約35,000人の町。
ここにある中高一貫校「明郷学園」では、全国でも珍しい教育プログラムが行われている。

「リンクス」という学校法人の名を持つ架空の会社を、生徒たち自身が経営するのだ。
社長や広報、マーケティング、製品開発、会計といった役割を本物の会社さながらに分担し、実際に製品を開発し、販売する。
授業で学んだことをそのまま社会で試すことが求められている。

なぜ府中でこんなことが?
町の背景には、深刻な人口減少がある。
かつて47,000人いた人口は、今や35,000人にまで減り、町から若者たちがいなくなっている。
企業も後継者不足で次々と閉鎖。過去10年間で300社近くが姿を消した。

「若者たちはみんな都会に出て行ってしまう。そして二度と戻ってこない」
それが府中の現状だった。

町の経営者が動いた
こうした危機に対し、町一番の雇用主であり、看板や表示板を製造する「タテイシ広美社」の会長、立石克昭が動いた。
彼は町の未来を案じ、こう語る。
「この町の子どもたちに、府中にも未来があることを伝えたい」
その一言が、「リンクス」のプロジェクトの始まりだった。

 

町ぐるみの挑戦
「リンクス」の製品開発も、町の企業と一体となって行われる。
時計の木材は地元の林業会社から、針は協力会社から、縫製は地元の縫製会社が手がける。
生徒たちは本物のビジネスの流れの中で、製品づくりに関わっていく。

熱気あふれる教室
マーケティング部では「このチラシのデザインどう思う?」
製品開発部では「ジッパー、納期大丈夫?」「試作品より高くなってるけど予算オーバーだよ!」
会計部は「そのコストは通らないよ」と冷静に返す。
まさに本物の会社のような緊張感が、教室を満たしている。

 

町が子どもたちを応援
校長の佐伯春彦は言う。
「彼らは私たちの未来です」
保護者も町の企業も、子どもたちの挑戦を支えている。

成功への道
そして、生徒たちが作った時計と筆箱は、東京のショップで実際に販売された。
その結果——
腕時計(2800円)は8本売れ、筆箱(2500円)は完売。
目標としていた10%の利益率も達成された。

学びのその先に
この経験を通して、子どもたちは将来についても考え始めた。

久保琴音:「医師になりたい」
渡辺新人:「バスケットボール選手に」
中井瑞希:「韓国語と英語を学んで、日本を多様な国にしたい」
そして時折こうも言う。

「いつか府中に戻るかもしれない」

全国への広がりは?
この取り組みはメディアでも大きく取り上げられたが、模倣する学校はまだほとんどない。
「日本の学校は厳格すぎて、新しい学びの形が生まれにくい」と専門家は言う。

しかし確かな一歩
立石克昭は言う。
「失敗してもいい。でもそこから学ぶこと、それが何より大事なんです」
「町の未来は子どもたちにかかっている」

生徒たちの誇り
廊下には歴代のリンクス製品が並び、誇らしげな写真が添えられている。

英語教師の三島かおりは語る。
「東京で商品を売る経験が、生徒たちに自信を与えています」

 

久保琴音はビジネスマナーも身につけた。
名刺を両手で渡し、深々とお辞儀をする。
「ビジネスマナーも最初から学びました。そうじゃないと通用しませんから」

町と企業とつながる学び
時計の木材は地元の林業会社から調達され、立石克昭の会社が加工し、時計の針は別の提携企業が製造する。
筆箱も、町内の縫製工場によって縫い上げられる。

こうして、学生たちと地元企業の間には自然なつながりが生まれる。
そして「リンクス」という名前自体が、こうした「つながり(リンク)」を象徴しているのだ。

このプロジェクトが目指しているのは、町の人々に「自分たちが町の未来に対して責任を持っている」という意識を持たせることでもある。
リンクスの授業ではこう言われている。
「自ら考え、決断し、行動することで、社会に感謝と笑顔の虹をもたらす」

起業家教育が必修科目に
府中では、こうした「学生会社経営」が中学1年生の必修科目となっている。
日本では前例のない取り組みだ。
このアイデアを立ち上げた立石克昭は語る。

「私たちが成し遂げたいことは2つあります。
まず、子どもたちが若いうちから経済を理解すること。
コストがどう積み上がるのか、どんな製品に市場があるのか、品質管理とは何か、そういったことです」

そしてもう一つは、教育のやり方を変えること。
「暗記するだけの授業ではなく、実際に挑戦し、試行錯誤しながら学ぶ場をつくることです。
子どもたちは、自分たちのアイデアを形にして、何度もプレゼンし、質問に答えなければならない。
プレッシャーの中でこそ、本当にクリエイティブな発想が生まれるんです」

地元企業も本気の支援
この挑戦には、町の企業も本気で関わっている。
注文があれば企業が立て替え払いをすることもあり、すべては「未来への投資」なのだと立石克昭は言う。

「実際のビジネスと違って、年度末まで支払いが行われないこともあります。
その間、私たち企業側のスタッフは時間をかけて学生たちに丁寧に説明しなければならない。
でも、それでもやる価値がある。
私たちはこれを『町への投資』だと考えているのです」

全国へ広げるには?
この画期的な取り組みが全国へ広がるかどうかは、まだ不透明だ。
府中の例がメディアで大きく報じられたにも関わらず、他の町からの反応は驚くほど少ない。
それは日本の教育の「厳しさ」が影を落としているからかもしれない。

制服や髪型まで厳格に管理される日本の学校では、「自由なプロジェクト」を行うこと自体が困難なのだ。
それでも、もし他の町で同様の試みを始めるなら、やはり地元の企業が立ち上がり、先導していく必要があるだろう。

「学校にとっても、企業にとっても、こうしたプロジェクトを通して得るものは大きい」
「ただし、それには時間がかかるでしょう」と、日本研究者のヴィンセント・レッシュは語っている。

確かな変化
英語と起業家教育を担当する三島かおり先生はこう語る。
「このコースを修了した生徒の多くが、協力企業に就職しています」
「ただ、まだ彼らの多くは大学生なので、結果が出るのはこれからです」

実際、「リンクス」の経験をきっかけに府中に戻ってくる若者がどれほどいるかは、まだ分からない。
しかし三島先生は、すでに子どもたちの中に変化が生まれているのを感じている。

「このコースを受ける前の子どもたちは、とても内気で、自分の未来についてもあまり考えていませんでした。
でも、企業と直接関わることで、彼らは大きく成長するんです。決意も生まれてくる。
もちろん、借金を抱えて学校法人に引き渡されるようなことには、誰もしたくないですからね」

ビジネスマナーも本格的
久保琴音は、名刺を差し出すときに深く頭を下げる。
その所作は、まるでベテランのビジネスパーソンのようだ。
「最初から正しい挨拶を学びました。
それができなければ、ビジネスでは何も始まらないからです」

廊下のショーケースには、これまでの「リンクス」の製品が並んでいる。
多機能の麻袋、上品な箸、多目的に使える器や酒器など。
それぞれの製品の前には、生徒や協力した企業の写真が飾られている。
生徒たちにとっては、自分たちが成し遂げた証であり、誇りそのものだ。

東京での挑戦
2024年1月。三島先生から「子どもたちはよく頑張りました」という報告が届いた。
腕時計20個のうち8個が、1個2800円で売れた。
2500円の筆箱は完売。
「利益率10%を目標」としていた生徒たちの計算通り、すべての請求額が支払える結果になった。

若き経営者たちの未来
14歳のリンクスの役員たちは、自分たちの将来をどう見ているのだろうか。
久保琴音は医者になりたいと言い、渡辺新人はバスケットボール選手、中井瑞希は手話や韓国語、英語を学んで「日本をもっと多様な国にしたい」と語る。
中井は言った。
「東京に行って勉強したいです。でも、いつか府中に戻りたいかもしれない」

最後に
この物語を伝えてくれたマティアス・マウルに感謝する。
彼は言語学者であり、コンピューター科学者でもあり、ハンブルクでコンサルタント、作家、講師として活躍している。

▼SDGs実現への取り組み

弊社は、社会見学などの教育活動の取り組みに積極的に協力しています。
子どもたちの知識や経験を広げ、勤労観や職業観を育む取り組みを地域と連携しながら継続していきます。