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地域と学校と保護者とが騎馬を組む

府中市が CS の全国大会で高評価

 コミュニティ・スクール(CS)を広島県内で先駆的に取り入れてきた府中市(平谷昭彦教育長)で8月2日と3日、全国CS研究大会inびんご府中(府中市教育委員会など主催)が催された。全国の学校・教育関係者ら1千人以上が参加。CSに関する事例発表や様々な意見交換などが行われ、子どもを中心に、学校と地域とが一体化した理想的な取組みの姿に、参加者の多くが驚かされたようだ。全国のCSを主導してきた貝ノ瀨滋三鷹市教委教育長は同大会を評し「歴史上、一つの大きなエポック(新しい時代)となった」と表現した。(山田富夫)

  CSとは、学校と保護者や地域住民がともに知恵を出し合い、学校運営に意見を反映させることで、一緒に協働しながら子ども達の豊かな成長を支える仕組みのこと。地域の行事などにも子ども達や教師が参加して繋がりを深め、地域全体で子育てに“参画”していくことをいう。府中市では14年に府中明郷学園で初めて導入し、順次各校でスタート。19年度には全市内10小中学校・義務教育学校で完全導入となった。

 なお同市では小中一貫教育も進めており、全国に先駆けて全市で03年から取り組み始め、現在は小中一体型(隣接)の府中学園(08年開校)と府中明郷学園(10年開校)、連携型(小中が離れている)の上下学園、併用型(一体・連携)の府南学園とがあり、一体型の2学園は17年から義務教育学校になっている。

小中一貫とCSの導入

 小中一貫教育の導入で、縦に繋がる学校の“芯”ができた。CSは横の連携だ。具体的には、府中明郷学園では㈱タテイシ広美社会長の立石克昭さんが同校学校運営協議会会長として関わったことからアントレプレナーシップ(創造的意欲や問題解決能力を引き出す企業家精神)が軸となり、総合的な学習の時間を使って(模擬)会社「Crale(クラル)」経営に乗り出した。上下学園は「天領」「銀山街道」「白壁」などの観光資源と、自然豊かな農業資源を元にした活動に取り組んでいる。ほかにも各学校では各地域の特色を活かした取り組みが盛んに行われている。

栗生小でのCSの実例

 栗生小学校(湯藤由佳校長、122人)では、学校運営協議会会長の徳毛實明さん(72)や、PTA会長を14―18年の5年間務め現在は同会委員の赤繁真示さん(49)らが中心となって、様々な取り組みを手掛けてきた。

 同小のある栗柄町は、南宮神社で毎年奉納される「虫送り太鼓」を通して多世代が結びつく、歴史や伝統を大切にする地域で、元々3世代交流も盛んに行われてきていた。だが一部の熱心な地域住民と、その時期子どもがいた保護者とだけの交流で終わっていることも多かったという。熱心に活動していた親子が卒業すると、学校との縁が無くなり、地域との繋がりもなくなっていた。

 同小は15年からCSを本格実施。「地域と学校と保護者とが組み合って騎馬を作り、子どもを乗せる。4者が皆同じ方向を向く騎馬戦の形、これが僕の考えるCSの有り様です」と話す赤繁さん。PTA会長としてまず仕掛けたのは、父親の参加を促したことだった。「男親が関わると、遊びが本気になる」と、プール清掃でも高圧洗浄機を持ち出したり、子ども達がマラソン大会を行った際にはPTAが独自に小旗を作り、沿道で地域住民と一緒に旗を振ったり一緒に走ったりして応援した。「親や地域の方が本気で関わってくれることがわかると、子ども達も自分が親の付属物じゃない、自分達が地域の一員であることを自覚するんです」。

成果が現れ始めて

 15・16年度に同校校長を務め、現在は初任者指導教員として同小に関わっている藤井美佐緒さんは「学校行事なのか地域の行事なのかわからなくなってくるほど、地域や保護者の方々の協力があり、大変ありがたかった」と振り返る。徳毛会長も「挨拶をしたら挨拶が返ってくる。手を振ったら振り返してくる。些細なことの繰り返しだが、子ども達とふれあう機会が多くなった。徐々に子ども達が輝き出し、成長していくのが実感できるようになった」と話す。子ども達にとって、学校は閉じた社会であり、評価も固定化しやすい。だが地域住民の異なる視線が入ったとき、一人一人の評価は多元化し、自ら生きられる場を見つけることができる。「子ども達の変化や成長を見たとき、子どもとの距離が縮まり、もっと関わりたくなり、もっと大切にしたくなってきます。今の子ども達の10年後が楽しみなんです」と目を細める。「よその子でも本気で怒れる大人が増え、優しく包んでフォローしてくれる大人もいます。昔のコミュニティのように、大人の背中を見て、子ども達は生きる手本を見つけます。そうした本気の繋がりによって“参画”が実現できます」。

今後の課題について

 全国大会を終えて、貝ノ瀨教育長は府中市の取り組みについて、地域課題の解決を図りながら子どもと大人が共に学びあえる「学校を核とした地域づくり」ができており、地域の絆を深め活性化を促す「コミュニティ・スクールがスクール・コミュニティに進化する道程が見えた」と高く評価した。

 今後の課題は、CSをどう維持していくかだ。生徒児童は卒業し、校長も3―4年で替わる。その時々で変化や新しいものの投入も必要だ。徳毛会長は、「前例を踏襲しつつ、その年の自分達らしさを出してほしい。本気で考え、悩み、苦労するから、人に本気が伝わり、大人も子どもも動かすことができます」と話し、「ただし、栗生小でやっていることをそのまま他校でコピーしても上手くいかないでしょう。それぞれの学校や地域で、ならではの解決策を見つけてほしい。その際、『子どもの未来・可能性』が鍵となります。そのキーワードを共通認識できたら、きっと上手くいくでしょう」と結んだ。